一眼でも生きている石

やるべきこと:体重65kg、ゴミ出し、掃除、睡眠時間の確保。できるまで他の一切は不要

I know who I am

 ゲーム業界に入ったのは単なる偶然であったが、ここを終の住処と考え、発展に寄与していきたいと思う。

 私を今の会社に入れてくた人が、経営陣との不和で辞職した。そのため私のところに、彼がやっていた仕事がどっかりと降ってくることになった。◯バゲーや◯クシィに展開している5つほどのタイトルの運営が、私の手に委ねられている。毎朝、昨日の売上をみて一喜一憂する。今のところ「憂」のほうがだいぶ多いのが現状だが、それでも生きている実感がある。

 新タイトルの立ち上げも委ねられた。以前から付き合いのあるウクライナのゲーム開発会社による新ソーシャルゲームを、今月末から来月にかけてリリースする。ウクライナ製のゲームを日本展開する仕事をしている人間なんてのが、日本に自分以外にいるのだろうかと考えると妙な高揚を禁じ得ない。毎日ウクライナ人やロシア人、◯クシィ、◯バゲーとぎゃんぎゃん交渉しながら作り上げた私の苦心の作品が、もうすぐ世にでる。そのユーザー数や売上高に精神を揺さぶられ続ける日々が間もなく来る。きっとその日々は、生の実感にあふれた日々であることだろう。

 仕事はなかなか楽しいが、しかしゲームの中でもいわゆる「ソーシャルゲーム」は私の好きなジャンルではない。むしろひたすらマウスをクリックし続ける退屈なゲームとの認識は変わっておらず、私のお客様には申し訳ないが、提供者である私はこんなものに金払う気にはとてもなれない。もちろんそれは個人的な好みの話であり、自分の意志で納得してお金を払ってくれるお客様をバカにする気はないが。

 私の好きなゲームは、もちろん囲碁であり、そして囲碁と同じく他者よりも優れたプレイヤーであろうとする向上心を掻き立てられるゲーム、明確なルールとフェアな条件の整った、プレイヤーがひたむきな気持ちで打ち込むことのできるゲームである。

 ゲーム業界に入る前は、囲碁以外にそのようなゲームが存在するということを知らなかった。ところが、それは私の割と身近なところで、巨大な規模で、輝かしい将来性をそなえて、存在したのである。いわゆる、eスポーツの世界である。

 eスポーツ、つまり既存の野球やサッカーなどのスポーツ業を、そのまま電子ゲームに置き換えた世界である。少し前まで「消費者」に過ぎなかったゲームのプレイヤーが、今は大企業とスポンサー契約を結び、数億単位の賞金のためにプレーするプロフェッショナルになっている。いっぱんのスポーツ業界と同じく、(建前上)フェアで、ひたむきで、残酷な世界だ。

 世界的に巨大な規模で勃興するこのeスポーツであるが、日本においてはどうもなじみがない。今でも一応ゲーム先進国であるこの国において、なぜなのか、いろんな説があるがどうもはっきりしない。

 では、eスポーツの世界で最も盛んな国はどこか? 韓国である。韓国というのは、今後まず何よりeスポーツの国として認識されるだろう。韓国がeスポーツの世界最先進国であることを知らない人は、韓国について何かコメントしようと思うべきではないのである。

 韓国をはじめとするeスポーツの世界の動きを追ったドキュメンタリーがYouTubeで見られる。昨年行われた、韓国ソウルのWカップスタジアムに4万に集めて行われたリーグ・オブ・レジェンドの決勝戦の模様は圧巻だ。

www.youtube.com

 少しばかりeスポーツというこの新しいジャンルに対する批判がましいことも含まれているが、それも含めて刮目して見るべき映像である。

 ここに来て私は、私の好きなものの奇妙な共通点に思いを馳せるのだ。囲碁と、eスポーツ(ゲーム)。どちらも、日本で大きな発展をみたジャンルであるにも関わらず、現況で日本はむしろ世界から取り残されている。代わりに、韓国、中国、台湾、香港などの「東アジア」が最も盛んな場所として、世界の注目を集めている。

 私は私の心の故郷のありかについて考えてしまう。好きなものがすぐ隣の国々にあって自分の国にはない、この状況は何なのか。

 そんな疑念は1秒で解決してしまう。要するに私は「東アジア人」なのであり、それがアイデンティティであり、その意味で私はまったく正しい場所にいるのである。とてもコスモポリタンにはなれそうにもない。私は強烈に、「東アジア」に対する帰属意識があるのだから。

 この東アジアが、今後も世界の最先進地域である囲碁とeスポーツの世界を、いっそう盛り上げ、他の地域に波及させ、私自身遊びつくすこと。これが私のなすべきことではないのか。私は目覚めてしまった。カルヴィニズム的な天職意識に。しばらくしたらソーシャルゲームの世界は卒業し、必ずこの世界に入る。今は今の仕事での実績を出すとともに、英語、韓国語、中国語をいずれも仕事で使えるレベルとするために磨いておく。また、自身が囲碁とeスポーツのそれなりのプレイヤーとなるべく鍛錬を積む。私は呼び出された。職業とはまさしく "calling" なのである。